とにかく手帖にメモる癖。

どこかの片隅にて、事実8割、妄想2割。

<蹴心>Vol.7

CONTENTS

1.あいさつ

2.<蹴心>Vol.7

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1.あいさつ

 最終節からしばらく間が空いてしまいましたが、シーズンが終わって感じたことをつらつらと書きました。それは本当に苦しい境地まで戦ったからこそ見えたものなのかなと思います。町田はJFLへ戻ることになりましたが、チームの戦いはこれからも続いていきます。今回の経験を生かし、さらに強いチームとなり、再びJの舞台へ戻ってくることを期待しています。では。

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2.<蹴心>Vol.7

1111日、試合後の平本一樹は遠くを見ながら呟いた。「自分がもう少し言えばよかった」。FC町田ゼルビアが初めてJ2という舞台での挑戦を終えて、悔やむのは節々に感じた〝甘さ〟だったと振り返る。その甘さとは上のレベルを知る平本だから感じ取れたものだ。そして、それをチームに伝えることが経験豊富なベテランの使命だが、FC岐阜の服部年宏でさえ「伝えたいことの数%しかできていない」と言うのだから至難である。前日10日、J2へ昇格するV・ファーレン長崎の試合の取材で感銘を受けた。長崎はこの試合に至るまでの3試合で2分1敗と、昇格という重圧を前にあきらかに失速していた。そんなチームを助けたのは、佐藤由紀彦の存在だ。佐藤といえば清水、山形、FC東京、横浜FM、柏、仙台と渡り歩き、この国のサッカーの酸いも甘いも知る36歳のベテランMF。どのクラブでも愛された人格者である。試合前、佐藤は選手だけでミーティングを開き、語りかけた。「開き直れ」と。3点リードの後半83分、2得点の神崎大輔に代わり、佐藤が投入された。佐野監督はこの交代を「ゲームがバタつき、ここを締めくくれるのは由紀彦しかいない」と説明する。DF古部健太も「由紀さんの一言で引き締まる。由紀さんの言葉を信じて頑張れば大丈夫と、皆が思っている」と続いた。長崎が苦しんだ末に勝ち取った勝利で、際立ったのは佐藤というリーダーの信頼感だ。では、町田において平本の信頼がなかったのかと言えば、決してそんなことはない。監督や選手、サポーターからの信頼は厚いものがあった。ただ、平本はその経験をチームへ落とし込めるキャラクターではなかったのだ。残留争いという重圧に町田は苦しんだ。そして、このもがいた経験は必ずや財産となる。町田と長崎が残した足跡は、チームが大きな苦難に立たされたとき、道標となれる〝偉大なリーダーの存在〟が必要なのだと、そう教示してくれたのではないだろうか。