Book Review Vol.1 『欧州サッカー 名将への挑戦状』
CONTENTS
1.あいさつ
2.書評『欧州サッカー 名将への挑戦状』ヘスス・スアレス/小宮良之著
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1.あいさつ
どうもシノです。かなり久しぶりなブログ更新です(笑)。今回はいつもお世話になっている東邦出版の編集長から新刊を献本いただいたので、書評なるものを書きました。
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2.書評『欧州サッカー 名将への挑戦状』ヘスス・スアレス/小宮良之著
本書は『名将への挑戦状〜世界のサッカー監督論〜』に続く第2弾。ベテランジャーナリストであるヘスス・スアレス氏による欧州各国で采配を振るう監督の丁寧な解説と分析が、メインコンテンツとして綴られている一冊。
以下、本書で登場する監督リスト↓
ジョゼ・モウリーニョ(現レアル・マドリー監督)
マヌエル・ペジェグリーニ(現マラガ監督)
チェザーレ・プランデッリ(現イタリア代表監督)
ローラン・ブラン(現フランス代表監督)
ディエゴ・シメオネ(現アトレティコ・マドリー監督)
ヨアヒム・レーブ(現ドイツ代表監督)
アンドレ・ビラス・ボアス(現トッテナム監督)
ジョゼップ・グアルディオラ(前FCバルセロナ監督)
並べられた名将たちの名は、現代の欧州サッカーシーンを彩る重要な人物で、攻撃的でスペクタクルなフットボールを愛するスアレス氏ならではの人選と言える。
本書を読めばすぐに分かることだが、スアレス氏は攻撃的なフットボールの信奉者だ。彼にとって守備的なフットボールを志向する人物はフットボールを壊す者。その象徴的な人物が 、レアル・マドリー現監督“ジョゼ・モウリーニョ”である。徹底的に組織されたハードな守備、そして瞬く間にゴールを奪い取る高速カウンターで勝利の山を築くモウリーニョに対し、「勝利の効率だけを考える彼の姿勢に、私は好意を持つことはできない」と一蹴する。一方、FCバルセロナを昨シーズンまで率いてクラブを去った“ジョゼップ・グアルディオラ”に対しては、「永遠の別れではない。私はそう考えている。『おつかれさま。いつかバルサに帰ってこいよ』」と、さながらラブレターのようにその功績を称え、ねぎらいの言葉をかける。
このような偏った論調について、共著者である小宮良之氏は前書きでこう記している。
「本書はスソ(ヘスス・スアレスの呼び名)の独断と偏見に満ちた監督本です。その論には白と黒しか存在せず、グレーはありません。読み進めていく内に眉をひそめてしまう方も少なからずいらっしゃるでしょう。
それでも、スソの論評が一つのフットボール監督の視点なのだと言うことをご理解いただければ幸いです」
僕は眉をひそめるどころか、その一点の曇りもない主張にエンターテイメントを感じた。<ジョゼ・モウリーニョ>の項の最初に記されているように、スアレス氏は「アンチ・モウリーニョではないし、言わんやバルセロニスタでもない」のだ。彼にとってフットボールというエンターテイメントにおいて、創造的でスペクタクルなフットボールが唯一の正義なのである。そのブレのないジャーナリズムには感服する思いだ。
そして本書の魅力はモウリーニョとグアルディオラだけに止まらない。個人的には、その他の監督分析に深い魅力を感じている。戦術分析は簡潔で、わかりやすく意図を汲み取ることができ、ベテランジャーナリストの業を見せてもらえるものだ。そして、その解説からは各人物の個性や人間味が感じられ、それぞれの生き様に引きつけられた。その中でも個人的に印象に残ったのは、ヨップ・ハインケスとディエゴ・シメオネ、そしてマルセロ・ビエルサだ。彼らのフットボールに対する哲学や心意気を、監督という孤独と葛藤を、バックグラウンドとして知っていれば、よりその監督が率いるチームの試合を観戦する際に深みが増すことだろう。
最近ではサッカー観戦の指南本が一つの潮流となりつつあるが、本書も監督という視点からフットボールの見方を養える良書であると思う。